
公開日:2021年6月14日/編集公開日:2026年10月8日
この記事の監修者 チヨダ防災株式会社 町田支店長 小熊 優斗
消防設備士(甲種第1類・第4類・第5類、乙種第6類)、防火対象物点検資格者。建築基準法第12条点検の資格(特定建築物調査員・建築設備検査員・防火設備検査員)をすべて保有し、防火設備定期検査にも検査員として携わる。
「防火設備の検査で、防火扉が最後まで閉まらないと指摘された」「煙感知器が作動しても扉が途中で止まってしまう」——こうしたご相談は珍しくありません。防火扉は普段は開けたままにしていることが多く、いざ閉まるべきときに閉まらなくても気づきにくい設備です。
本記事では、点検で閉鎖不良が見つかった防火扉について、扉を外してオートヒンジと軸受けを交換した工事を写真とともにご紹介します。あわせて、防火扉が閉まらないとどうなるのか、なぜ閉まらなくなるのか、点検でどこを見ているのかを解説します。
目次
1. 工事の概要
| 所在地 | 神奈川県横浜市神奈川区 |
|---|---|
| 建物の用途・規模 | 事務所ビル/地上5階建て/築42年(2021年の施工当時) |
| 工事のきっかけ | 点検時に煙感知器を作動させたところ、防火扉が最後まで閉まらなかった |
| 工事内容 | 防火扉を取り外し、オートヒンジ(自閉機能付き丁番)と軸受けを交換。建て込み後、閉鎖速度を調整し、煙感知器連動で閉鎖することを確認 |
| 交換枚数 | 2枚 |
| 工期 | 2日 |
※費用は建物規模、扉の枚数・サイズ、ヒンジの種類、施工範囲により異なります。詳しくは現地調査のうえ、お見積りいたします。

オートヒンジ交換後の防火扉
2. 防火扉が閉まらないと何が起きるのか
防火扉は「防火区画」を成立させるための設備
建物の内部は、火災が起きても一定の範囲で火や煙を食い止められるように、耐火性のある壁や床で区切られています。これを防火区画といい、建築基準法施行令第112条に定められています。壁で区切るだけでは人が通れませんので、通路や階段の出入口には防火扉(防火戸)や防火シャッターを設け、火災時にはそこを閉じて防火区画を形成します。防火扉は、火災時の延焼や煙の拡大を防ぐために防火区画等に設けられる、建築基準法上の「防火設備」です。
とくに階段は、建物を縦に貫く「煙突」のような空間です。防火扉が閉まらなければ、火や大量の煙が階段に流れ込み、上の階へと一気に広がってしまいます。階段は避難経路そのものですから、そこに煙が入れば避難もできなくなります。防火扉は「閉まって初めて役に立つ」設備です。
常時閉鎖式と随時閉鎖式(煙感知器連動)
防火扉には大きく2つの方式があります。
| 方式 | 仕組み |
|---|---|
| 常時閉鎖式 | 普段から閉まっている扉。人が通ると、ドアクローザーやオートヒンジの力で自動的に閉まる |
| 随時閉鎖式 (煙感知器連動) |
普段は開けた状態でロック(保持装置)により固定されている扉。火災時に煙感知器が作動すると自動でロックが解除され、オートヒンジなどの自閉装置の力で閉まる |
今回の現場は後者の煙感知器連動型です。イメージとしては、「普段はロックで開けたまま固定しておき、火災の発生時にそのロックを自動で解除して、扉を閉める」という二段階の仕組みです。ロックの解除には、煙感知器の作動信号を受けて電気的に解除する電磁式と、炎の熱で低融点の金属が溶けて解除される温度ヒューズ式があります。
ここで大事なのは、ロックが解除されたあと、扉を閉め切る力はオートヒンジが出しているということです。つまり、ヒンジが弱れば「感知器は正常に作動し、ロックも外れたのに、扉は閉まらない」という状態になります。閉鎖不良の点検では、感知器・ロック・ヒンジのどこに原因があるかを切り分けて確認します。
なお、常時閉鎖式の防火扉は、告示改正(令和7年7月施行)で防火設備定期検査の対象に加えられましたが、東京都のように細則で従来どおり特定建築物定期調査の対象としている自治体もあります。どちらの検査で確認するかは自治体により異なりますので、ご不明な場合はご相談ください。
3. 防火扉が閉まらなくなる主な原因
防火扉は「上下の軸」で支えられている
原因の話の前に、防火扉の構造に少しだけ触れます。防火扉の多くは、一般的な室内ドアのように側面の丁番で吊るのではなく、扉の上下に設けた軸で支える構造になっています。鋼製で重い扉の荷重を上下2点で受けられること、火災の熱で枠が多少変形しても軸が狂いにくいこと、金具が枠の内側に収まり隙間が少ないことが、この構造が採用される理由です。
オートヒンジは、この軸に扉を閉め切るためのバネ機構を組み込んだ丁番で、下側の軸受けは扉の重さを常に受け続けています。そのため長年使ううちに軸受けがすり減ると、扉がわずかに沈み込み、下端が床に擦れたり、枠に当たって閉まりきらなくなったりします。「開け閉めのたびに床に擦れる音がする」のは、この沈み込みの典型的なサインです。
閉まらなくなる典型的な原因
点検で閉鎖不良が見つかる防火扉には、いくつか典型的な原因があります。
- オートヒンジの劣化:ヒンジ内部のバネや油圧機構が長年の使用で弱り、扉を閉め切る力が出なくなる
- 軸受けの摩耗:扉の重さを受ける軸受けがすり減り、扉が下がって床や枠に当たる(いわゆる「扉の垂れ」)
- 閉鎖速度の調整不良:速すぎて跳ね返る、遅すぎて途中で止まる
- 閉鎖障害:ドアストッパーやくさび、扉の前に置かれた荷物、後から敷かれたマットやカーペット、床の改修で高くなった床面などが扉の閉まる軌道に干渉する
- 気圧の影響:空調や換気による室内外の気圧差、階段室を吹き抜ける風圧で扉が押し戻され、最後まで閉まりきらない
- 扉・枠の変形やラッチの不良:閉まっても掛からず、押せば開いてしまう
このうち上の2つは部品の経年による劣化で、扉そのものは健全なことが多いのが実情です。一言でいえば、扉を閉め切る「力」を出す部品が弱っているだけなら、扉を丸ごと交換しなくてもヒンジと軸受けの交換で機能を回復できる、ということです。ただし、扉や枠が熱や建物の歪みで変形している場合や、扉本体が損傷している場合は、部品交換だけでは直らず、枠の補修や扉・枠ごとの改修が必要になることがあります。
こんな症状は劣化のサインです
- 開け閉めのときに、床に擦れる音や引っかかるような感触がある
- 扉が最後まで閉まりきらない、閉まってもラッチが掛からない
- 自動で閉まるはずの扉が、途中で止まってしまう
劣化の程度と対処のおおまかな目安は次のとおりです。
| 劣化の程度 | 症状の例 | 対処の目安 |
|---|---|---|
| 軽度 | 閉まりが少し重い、速度が合わない | 閉鎖速度の調整、注油 |
| 中程度 | 床に擦れる、閉まりきらない | オートヒンジ・軸受けの交換(今回の工事) |
| 重度 | 扉・枠の変形や損傷、腐食 | 枠の補修、扉・枠ごとの改修 |
※表が切れている場合は横にスクロールできます →
※症状から一律に判断できるものではありません。現地で状態を確認したうえで対処をご提案します。
「とりあえず閉まる」応急処置にはご注意ください
閉まりが悪いとき、枠側の受け金物の位置だけをずらして掛かるようにする、潤滑剤を大量に差す、当たっている部分を削る——といった応急処置で「とりあえず閉まる」状態にしてしまうことがあります。しかし、原因が扉の垂れや枠の変形にある場合、受け金物だけを動かしても別の場所に不具合が出ますし、不具合そのものが見えなくなって点検で発見が遅れる原因にもなります。原因を確認したうえで、根本の部品(ヒンジ・軸受けなど)から直すことをお勧めします。
4. 点検で防火扉をどのように確認しているか

煙感知器を作動させて、防火扉が閉まるかを確認
防火扉の点検と一口に言っても、確認する点検の種類は一つではありません。煙感知器連動型(随時閉鎖式)の防火扉は、建築基準法第12条第3項に基づく防火設備定期検査(建築基準法12条点検の一つ)で確認します。一方、常時閉鎖式は特定建築物定期調査で見る自治体もあり、扉の方式・建物・自治体によってどの点検で確認するかが異なります。ご自身の建物の防火扉がどの点検の対象かが分からない場合も、ご相談いただければ整理してご案内します。
防火設備定期検査の項目や判定基準は平成28年国土交通省告示第723号に定められており、おおむね次の点を確認します。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 閉鎖の状況 | 最後まで閉まりきり、ラッチボルトが枠側の受け金物に無理なく掛かるか(手で押し込まないと入らない、受け金物の縁に当たるのは不良のサイン) |
| 扉・枠の状態 | 変形・損傷・腐食がないか、枠との隙間が均一か、扉が垂れていないか |
| 閉鎖速度・閉鎖力 | 途中で止まらず、かつ危険なほど速くないか |
| 周囲の障害物 | 閉まる軌道上に荷物・ストッパー・マットなどがないか |
| 煙感知器との連動 | 感知器を作動させたときロック(保持装置)が解除され、実際に閉鎖するか |
判定で特に大事なのは、手で押し込めばラッチが掛かる状態を「閉まった」とみなさないことです。火災のとき、扉を押してくれる人はいません。通常の閉鎖動作だけで、ラッチボルトが受け金物に無理なく掛かって初めて合格です。また、止まり方にも原因のヒントがあります。毎回同じ位置で止まるなら床や枠との接触など機械的な抵抗、閉まるときと閉まらないときがあるなら部品の摩耗やがたつき、閉鎖速度の不良が疑われます。
また、当社では消防設備点検で自動火災報知設備の感知器を試験する際にも、連動している防火扉が閉まるかどうかを併せて確認しています。今回の現場でも、煙感知器を作動させたところ扉が最後まで閉まりきらないことがわかり、工事に至りました。
防火扉がどこにあり、どの範囲を区画しているかを把握しておくことは、火災を建物のどの範囲で食い止められるかを理解するための基本です。建物の管理者の方も、半年に1回の消防設備点検(機器点検)や防火設備定期検査の機会に、ぜひご一緒に確認してください。
あわせて、「閉まりが重くなった」「閉まるときの音が変わった」「一度で掛からないことがある」「床に擦れるようになった」といった日常の小さな変化をメモしておいていただくと、点検時の原因特定がぐっと早くなります。いつ頃から・どの扉で起きているかが分かるだけでも、大きな手がかりになります。
5. オートヒンジ交換工事の流れ(写真)
ステップ1 防火扉を取り外す
防火扉は鋼製で重量があるため、複数人で支えながら枠から外します。ヒンジと軸受けは扉の重さを常に受けている部品ですので、外してみると摩耗の状態がよくわかります。
ステップ2 オートヒンジと軸受けを交換する

扉を外して、オートヒンジと軸受けを交換
劣化したオートヒンジと軸受けを新しい部品に交換します。防火扉は国土交通大臣の認定品または告示に定める仕様のいずれかで防火性能が担保されていますので、ヒンジなどの部品も扉の防火性能を損なわない適合品を使います。既存の扉に合う品番を事前に確認しておくことで、当日の作業を短時間で終えることができます。
ステップ3 建て込みと閉鎖速度の調整
扉を枠に戻し、垂れがないか、枠との隙間が均一かを確認します。オートヒンジの閉鎖速度を調整し、途中で止まらず、かつ強く跳ね返らない速度に合わせます。
ステップ4 煙感知器連動で閉鎖することを確認

防火扉がきちんと閉まるようになりました
最後に、実際に煙感知器を作動させ、ロックの解除から閉鎖までの一連の動きと、ラッチボルトが受け金物に無理なく掛かることを確認して完了です。「ロックが自動で解除され、最後まで閉まりきってラッチが掛かる」ところまでが、防火設備検査で問われる基本です。
6. 費用と工期の目安
今回の工事は、2枚の防火扉のオートヒンジと軸受けを交換し、工期2日で完了しました。
費用は扉の枚数・サイズ・重量、ヒンジの種類(メーカー・耐荷重)、軸受けの状態、扉を外すための作業環境によって変わります。扉本体を交換せず部品交換で対応できる場合は、扉ごと交換するより費用を抑えられます。現地調査・お見積りは無料ですので、点検で指摘を受けた際はお気軽にご相談ください。
※費用は建物規模、扉の枚数・サイズ、ヒンジの種類、施工範囲により異なります。詳しくは現地調査のうえ、お見積りいたします。
7. よくあるご質問
Q. 防火扉が閉まらない場合、扉ごと交換しなければなりませんか?
A. 多くの場合、扉本体は健全で、オートヒンジや軸受けなど部品の劣化が原因です。部品の交換で閉鎖機能を回復できることがよくあります。また、扉や枠にゆがみがある場合でも、扉そのものを交換するのではなく、扉の加工(切除や調整)によって是正できることもあります。変形や損傷が大きい場合は、扉の交換をご提案することもあります。
Q. 煙感知器は正常に作動しているのに、扉が閉まりません。どこが悪いのでしょうか?
A. 感知器が作動してロック(保持装置)が解除されても、扉を閉め切る力はオートヒンジやドアクローザーが出しています。ヒンジの劣化や軸受けの摩耗、閉鎖速度の調整不良、扉の前の障害物のほか、空調等による室内外の気圧差で扉が押し戻されていることもあります。現地で確認いたします。
Q. 工事中は防火扉を使えなくなりますか?
A. 扉を外している間はその出入口の防火区画が一時的に機能しない状態になります。作業は短時間で終わりますが、建物の管理者の方には事前にお知らせし、作業中の火気使用を控えていただくほか、必要に応じて消火器の増設や見張りの配置など、防火管理者の方と協議のうえ安全措置を講じます。
Q. 防火扉の点検は何年に一度必要ですか?
A. 建築基準法第12条第3項に基づく防火設備定期検査の対象となる建築物では、原則として年1回、特定行政庁が定める時期に検査・報告が必要です。対象となる建築物の範囲は自治体の指定によって異なりますので、ご不明な場合はご相談ください。
Q. 防火扉の前に物を置いてはいけないのはなぜですか?
A. 扉が閉まる軌道上に物があると、火災時に扉が閉まりきらず、防火区画が成立しません。ドアストッパーやくさびで扉を開けたままにするのも同じ理由で避けてください。煙感知器連動型は、開けたままにしたい場合でも火災時には自動で閉まるよう、正規の固定装置で保持しています。
Q. 防火扉が閉まらないとき、まず何を確認すればよいですか?
A. まず、扉が閉まる軌道上に荷物・ドアストッパー・マットなどの障害物がないかを確認してください。次に、扉が床や枠に当たっていないか(扉の垂れ)、ヒンジや軸受けにがたつきや異音がないかを見ます。煙感知器連動型であれば、固定装置がきちんと外れているかも確認点です。原因が特定できない場合や部品の劣化が疑われる場合は、専門業者の点検をご依頼ください。
Q. 防火扉が床に擦れるのですが、放置しても大丈夫ですか?
A. 放置はお勧めしません。床に擦れるのは、軸受けの摩耗などで扉が沈み込んでいるサインであることが多く、進行すると扉が閉まりきらなくなり、火災時に防火区画としての役目を果たせなくなるおそれがあります。早い段階であれば調整や注油で済むこともありますので、気づいた時点でご相談ください。
Q. オートヒンジの交換は自分でできますか?
A. お勧めしません。防火扉は鋼製で重量があり、扉を外して建て込み直す作業には複数人と経験が必要です。また、防火扉は認定品または告示仕様として防火性能が担保されているため、部品も扉に適合するものを選ぶ必要があります。交換後は閉鎖速度の調整と煙感知器連動の確認まで行って初めて完了ですので、専門業者にご依頼ください。
8. まとめ|防火扉の点検・修理はチヨダ防災へ
防火扉は、閉まって初めて火と煙を食い止めることができる設備です。開け閉めのときの擦れる音や閉まりの重さは、ヒンジや軸受けの劣化が進み、防火扉の性能が落ち始めているサインです。閉鎖不良はオートヒンジや軸受けの劣化が原因であることが多く、部品交換で直せることが少なくありません。
チヨダ防災は1975年の創立以来、消防設備の点検・工事を自社施工で行うとともに、建築基準法第12条に基づく定期報告(防火設備定期検査を含む)にも対応しています。社内には建築基準法12条点検の資格者(特定建築物調査員・建築設備検査員・防火設備検査員)が多数在籍しており、消防設備点検・12条点検・修理工事を一つの窓口でお受けできます。
東京都(新宿本社/町田支店)、神奈川県(横浜本社)、埼玉県(川口市)、千葉県(市川市)の各拠点から、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県を中心に、防火扉の閉鎖不良の修理、オートヒンジ交換、防火設備定期検査、消防設備の点検・工事に対応しています。今回の横浜市神奈川区をはじめ、横浜市内の物件には横浜本社(港北区)を中心に、近隣の拠点とも連携して対応しています。防火扉が閉まらない、点検で指摘を受けた、といったときはお気軽にご相談ください。
防火扉の修理・点検のご相談はチヨダ防災へ
お電話でのご相談は、最寄りの拠点までお気軽にどうぞ(受付時間:平日・土曜 9:00〜19:00)
| 新宿本社(東京都新宿区) | 03-6233-9821 |
|---|---|
| 横浜本社(横浜市港北区) | 045-432-4231 |
| 埼玉支店(埼玉県川口市) | 048-487-9041 |
| 千葉支店(千葉県市川市) | 047-393-8391 |
| 町田支店(東京都町田市) | 042-860-3191 |




