

「自宅や購入した一軒家で民泊を始めたい」——そのとき、多くの方が見落としがちなのが消防設備です。
結論から言うと、民泊(住宅宿泊事業)の開業には、原則として消火器・自動火災報知設備(小規模な施設では特定小規模施設用)・誘導灯・非常灯などの設置と、消防署の確認を経た「消防法令適合通知書」の取得が必要です。
普通の住宅として使ってきた建物でも、民泊(住宅宿泊事業)として人を泊める建物になると、消防法上の扱いが変わり、住宅では求められなかった消防設備の設置が必要になります。設置と届出が済んでいなければ、民泊の営業を始めることはできません。
本記事では、東京都新宿区北新宿の築約50年・2階建ての戸建て住宅で当社が行った消防設備の新設工事をもとに、民泊の開業に必要な設備と工事の内容を解説します。これから民泊を始める方、開業をサポートする不動産会社・行政書士の方に向けた内容です。
監修:清水 健一郎(チヨダ防災株式会社 副社長/消防設備士 甲種第1類〜第5類・乙種第6類・第7類/防火対象物点検資格者 ほか) 公開日:2026年8月4日
この記事でわかること
- なぜ民泊を始めると消防設備が必要になるのか
- 今回設置した4つの設備(消火器・自動火災報知設備・誘導灯・非常灯)の役割
- 小規模な民泊の味方「特定小規模施設用自動火災報知設備」とは
- 開業までの流れと「消防法令適合通知書」
- 外国人オーナー様の開業サポートと多国籍のお客様への対応実績
- よくあるご質問(住宅用火災警報器では足りない?費用は?)
工事の概要
| 建物用途 | 戸建て住宅(民泊〈住宅宿泊事業〉として開業予定) |
|---|---|
| 所在地 | 東京都新宿区北新宿 |
| 規模 | 地上2階建て・延べ面積約180㎡ |
| 築年数 | 築約50年 |
| 工事内容 | 消火器(標識・設置台つき)、特定小規模施設用自動火災報知設備、誘導灯、非常灯(非常用照明装置)の新設 |
| 工事のきっかけ | 民泊(住宅宿泊事業)の開業準備 |
| 施工時期 | 2026年8月 |
| 工期 | 1日 |
| 工事金額 | 55万円(税込) ※建物規模、設備構成、施工範囲により費用は異なります。詳しくは現地調査のうえ、お見積りいたします。現地調査・お見積りは無料です。 |
なぜ民泊を始めると消防設備が必要になるのか
ポイントは、建物そのものではなく「使い方」で消防法上の扱いが決まることです。
これまで住宅として使ってきた建物でも、宿泊料を受けて人を泊める民泊になると、消防法上は原則として旅館・ホテルと同じ「宿泊施設」として扱われます。宿泊者は建物の中の様子を知らず、就寝中に火災が起きるおそれもあるため、住宅よりも厳しい基準が適用されるのです。
具体的には、住宅なら住宅用火災警報器だけでよかった建物に、自動火災報知設備・誘導灯・消火器などの設置が求められるようになります。宿泊施設としての自動火災報知設備は、建物の広さにかかわらず必要です。また、設置した設備は消防署へ届出を行い、検査を受ける必要があります。
なお、家主が居住しながら一部の部屋だけを貸すケースなど、建物の使い方によっては扱いが緩和される場合もあります。どの設備が必要になるかは間取り・面積・貸し方で変わるため、まずは現地調査でご確認ください。
| 項目 | 住宅 | 民泊(宿泊施設) |
|---|---|---|
| 火災の感知・警報 | 住宅用火災警報器 | 特定小規模施設用自動火災報知設備(または自動火災報知設備) |
| 避難誘導 | 誘導灯は不要 | 誘導灯が必要 |
| 消防署への手続き | 不要 | 設備の届出・検査に加え、消防法令適合通知書が必要 |
今回設置した4つの消防設備
今回の現場では、次の4つの設備を新設しました。工事は1日で完了しています。それぞれの役割を写真とあわせてご紹介します。
| 設備 | 役割 | 根拠法令 |
|---|---|---|
| 消火器 | 初期消火 | 消防法 |
| 特定小規模施設用自動火災報知設備 | 火災の感知・警報 | 消防法 |
| 誘導灯 | 避難口・避難方向の表示 | 消防法 |
| 非常灯(非常用照明装置) | 停電時の避難経路の照明 | 建築基準法 |
1. 消火器|初期消火の要

火が小さいうちに消し止めるための、最も基本的な設備です。設置にあわせて、使用方法を図解した標識と設置台も取り付けました。標識は日本語・英語・韓国語の3か国語表記で、海外からの宿泊者でも使い方がわかるようにしています。民泊は外国人ゲストの利用が多いため、こうした配慮は実用面でも重要です。
2. 特定小規模施設用自動火災報知設備|火災をいち早く知らせる

火災の熱や煙を感知して、建物にいる人に警報で知らせる設備です。詳しくは次の章で解説します。
3. 誘導灯|避難の方向を示す

緑色のピクトグラムで避難口の場所を示す設備です。内蔵バッテリーにより、停電しても点灯し続けます。初めて泊まる建物で火災に遭った宿泊者にとって、暗闇や煙の中で出口の方向を教えてくれる命綱です。
4. 非常灯(非常用照明装置)|停電時に避難経路を照らす

停電時に自動で点灯し、避難経路を照らす照明です。誘導灯が「出口の方向」を示すのに対し、非常灯は「足元と経路」を明るくします。実はこの非常灯、消防法ではなく建築基準法にもとづく設備で、担当業者が分かれがちなところです。当社は消防設備士と第一種電気工事士の両方の資格で、消防設備と非常灯・電気工事をまとめて施工しています。消防設備工事業者と電気工事業者を分けて手配する必要がないため、オーナー様の窓口はひとつで済み、日程調整や施工管理もまとめられるので、手間と費用を抑えやすくなります。
小規模な民泊の味方「特定小規模施設用自動火災報知設備」とは
「自動火災報知設備」と聞くと、ビルにあるような受信機と配線だらけの大がかりな設備を想像されるかもしれません。費用面で民泊開業をあきらめる方が出るのも、たいていここです。
しかし、延べ面積300㎡未満の小規模な宿泊施設などでは、「特定小規模施設用自動火災報知設備(特小自火報)」という簡易なタイプが認められています。今回の建物は延べ面積約180㎡でこの基準に収まるため、特小自火報を採用しました。特徴は次のとおりです。
- 受信機が不要 — ビル用の自動火災報知設備で必要な受信機・発信機・地区音響装置を設けなくてよいため、機器も工事もコンパクトになります
- 感知器同士が連動 — 1か所で火災を感知すると、連動するすべての感知器が一斉に鳴動し、別の部屋で就寝中の宿泊者にも火災を知らせます
- 費用を抑えられる — 大がかりな配線工事を抑えられるため、ビル用の設備を入れる場合と比べて費用を大きく抑えられます
なお、近年の法改正により、延べ面積300㎡以上の建物でも、建物の構成や宿泊部分の広さなど一定の条件を満たす場合には、特小自火報の設置が認められるようになっています。「うちは300㎡を超えているから大がかりな設備しか入れられない」とあきらめる前に、まずはご相談ください。該当するかどうかは現地調査で確認いたします。
「住宅用火災警報器が付いているから大丈夫」と思われがちですが、住宅用火災警報器と特小自火報は別の設備です。民泊として使う部分には、原則として特小自火報(または自動火災報知設備)の設置が必要になります。
開業までの流れと「消防法令適合通知書」
民泊(住宅宿泊事業)の届出の際には、多くの自治体で「消防法令適合通知書」の提出を求められます。これは「この建物は消防法令に適合しています」と消防署が証明する書類で、必要な消防設備を設置し、消防署の確認を受けなければ交付されません。つまり、消防設備の工事は民泊開業の前提条件です。
開業までの消防関係の流れは、おおむね次のとおりです。
- 現地調査 — 建物の間取り・面積・貸し方を確認し、必要な設備を洗い出します
- 管轄消防署との事前相談 — 設置する設備の内容を消防署と確認します
- 設置工事 — 消防設備士の資格者が施工します
- 消防署への届出・検査 — 設置した設備の届出を行い、確認を受けます
- 消防法令適合通知書の交付申請 — 交付された通知書を添えて、民泊の届出手続きへ進みます
民泊制度の全体像や届出方法は、観光庁の民泊制度ポータルサイトで確認できます。同サイトでも、届出前に管轄消防署へ消防法令への適合状況を相談するよう案内されています。
当社にご依頼いただいた場合、現地調査から消防署との事前相談、設置工事、届出、消防法令適合通知書の交付申請まで、消防関係の手続きをすべてお任せいただけます。オーナー様ご自身で消防署とやり取りしていただく必要はなく、開業準備の他の作業に集中できます。
また、当社は地元・新宿消防署に消防設備業の届出を行っており、日頃から届出や検査でよく出入りしています。地元の消防署の窓口や手続きの流れを熟知していますので、消防署への事前相談の段階から安心してお任せください。
外国人オーナー様の民泊開業もサポートします
今回のご依頼主は、ベトナム出身のオーナー様でした。当社は新宿・大久保のまちで約50年商売をしてきており、中国・韓国・台湾・シンガポール・タイ・ネパールなど、海外出身のお客様からのご依頼を数多くお受けしてきました。担当者によっては、お客様の半数以上が外国出身という社員もいるほどです。そんな当社でも、ベトナム人のお客様の工事は会社として初めてのことでした。
多国籍のまちである新大久保・北新宿エリアでは、外国出身の方が民泊や飲食店を開業するケースが年々増えています。一方で、消防法の手続きは日本人でも難しく、言葉の壁があればなおさらです。当社では、必要な設備とその理由、費用、手続きの流れを、一つひとつ丁寧にご説明しながら工事を進めています。開業をサポートする不動産会社様・行政書士様からのご相談もお受けしています。
よくあるご質問
Q. 民泊を始めるのに、消防設備は必ず必要ですか?
原則として必要です。住宅として使ってきた建物でも、民泊として人を泊めると消防法上は宿泊施設として扱われ、自動火災報知設備や誘導灯などの設置が求められます。建物の使い方(家主居住型か、貸す部屋の広さなど)によって必要な設備は変わるため、現地調査でご確認ください。
Q. 住宅用火災警報器が付いていれば、それでよいですか?
いいえ。住宅用火災警報器は住宅のための設備で、民泊として使う部分には原則として特定小規模施設用自動火災報知設備(または自動火災報知設備)が必要です。感知器同士が連動して一斉に鳴動する点が大きな違いです。
Q. 消防法令適合通知書とは何ですか?
建物が消防法令に適合していることを消防署が証明する書類で、民泊(住宅宿泊事業)の届出の際に多くの自治体で提出を求められます。必要な消防設備の設置と消防署の確認を経て交付されます。当社は交付申請までの消防関係の手続きを一連でサポートします。
Q. 費用はどのくらいかかりますか?
建物の規模・間取り・設置する設備によって変わります。今回の事例では、延べ面積約180㎡の2階建て戸建てに消火器・特定小規模施設用自動火災報知設備・誘導灯・非常灯を新設して55万円(税込)でした。現地調査・お見積りは無料ですので、開業計画の段階でもお気軽にご相談ください。
Q. 民泊の消防設備工事は、いつ相談すればよいですか?
民泊の届出前に消防設備の設置と消防署の確認が必要になるため、物件の購入・契約後、開業準備のできるだけ早い段階でのご相談をおすすめします。物件探しの段階で「この建物なら設備費用がいくらかかるか」を確認しておくと、開業計画が立てやすくなります。
Q. 外国人でも工事を依頼できますか?
もちろんです。必要な設備や手続きの流れを丁寧にご説明しながら進めますので、日本の消防法に詳しくない方もご安心ください。開業をサポートされる不動産会社様・行政書士様経由のご相談もお受けしています。
まとめ
築50年の戸建て住宅でも、特定小規模施設用自動火災報知設備を活用すれば、費用を抑えながら民泊の開業に必要な消防法令の基準を満たせます。
- 住宅を民泊にすると、消防法上は原則宿泊施設扱いになり、住宅では不要だった消防設備が必要になります
- 今回の新宿区の現場では、消火器・特定小規模施設用自動火災報知設備・誘導灯・非常灯の4つを新設しました
- 延べ面積300㎡未満の小規模施設なら、受信機不要の特小自火報で費用を抑えて法令に適合できます。300㎡以上でも一定の条件で認められる場合があります
- 民泊の届出には消防法令適合通知書が必要で、消防設備の設置と消防署の確認がその前提です。当社なら消防関係の手続きをすべてお任せいただけます
- 非常灯は建築基準法の設備。当社は消防設備と電気工事の両資格でまとめて施工できるため、業者を分けて手配する必要がありません
新宿区・東京都内の民泊の消防設備はチヨダ防災へ
チヨダ防災株式会社は1976年の創業以来、新宿本社を拠点に消防設備の点検・工事を自社施工で行ってきました。地元の新宿消防署に消防設備業の届出を行い、日頃から出入りしている会社です。民泊・旅館の開業に伴う消防設備の設置は、消防署への事前相談から現地調査、施工、届出、消防法令適合通知書の取得サポートまで一貫対応します。
東京都(新宿本社/町田支店)、神奈川県(横浜本社)、埼玉県(川口市)、千葉県(市川市)の各拠点から、一都三県の民泊・宿泊施設に対応しています。現地調査・お見積りは無料です。物件探しや開業計画の段階でのご相談も歓迎します。お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。
関連ページ
監修者
清水 健一郎(チヨダ防災株式会社 副社長)
チヨダ防災株式会社に勤務し、新宿エリアで28年にわたり消防設備の業務に従事。
消防設備士 甲種第1類〜第5類/乙種第6類・第7類/防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/防火安全技術者/建築基準法12条点検資格者/第二種電気工事士



