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緩降機の交換工事の流れと費用を解説|型式失効した避難器具を最新型へ更新【東京都世田谷区の施工事例】

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緩降機の交換工事の流れと費用を解説|型式失効した避難器具を最新型へ更新【東京都世田谷区の施工事例】

この記事の要点

  • 東京都世田谷区の複合用途ビルで、1988年製の緩降機(かんこうき)を最新型へ交換した施工事例です。
  • 交換前の機器は「型式失効品」でした。型式失効とは、規格の改正により古い型式承認の効力が失われることで、法令で定められた特例期間が終了した後は、そのまま使い続けることができません。
  • 交換後は寸法の確認に加え、専用の降下試験機を使って降下速度(毎秒56cm)を実測し、性能を確認しました。
  • 工期1日・工事金額55万円(税込)。消防署への届出手続きも当社が一括してサポートしました。

公開日:2026年8月20日

「消防設備点検で、緩降機が型式失効品だと指摘された」「設置から何十年も経っているが、まだ使えるのか分からない」――そんなお悩みはありませんか。

緩降機は、火災時に上階から地上へ安全に降りるための避難器具です。普段は使わない設備だからこそ劣化に気づかないまま放置されがちですが、古い緩降機のなかには、そもそも法律上使い続けることができない「型式失効品」が今も残っています。

この記事では、東京都世田谷区の建物で行った緩降機の交換工事の実例をもとに、型式失効とは何か、交換工事の流れ、費用の目安、降下試験による性能確認までをわかりやすく解説します。

この記事の監修者
チヨダ防災株式会社 新宿本社 土肥 崇
入社3年目。消防設備の点検・施工に従事。
消防設備士 第1類〜第7類/第二種電気工事士

この記事でわかること

緩降機とは?どんな避難器具か

緩降機(かんこうき)は、消防法で定められた避難器具のひとつです。ベルト(着用具)を体に装着し、調速機(ちょうそくき)と呼ばれる装置の働きで、ロープを伝ってゆっくりと地上へ降りることができます。

使い方は大きく次の流れです。

  1. 取付金具(アーム)を展張し、緩降機本体のフックを掛けて安全環を締める
  2. ロープを巻いたリールを地上へ投下する
  3. ベルトを胴部に装着し、体を後ろに倒してベルトを締める
  4. 両手を壁面に向けて、壁を軽く押さえながら降下する

※実際に使用する際は、機器に表示された使用方法・取扱い上の注意に従って操作してください。

1度に降下できるのは1人ずつですが、ロープの両端に着用具が付いているため、1人が降りるともう一方の着用具が上がってきて、連続して避難できる仕組みになっています。

階段が使えなくなった場合の「もうひとつの避難経路」として、共同住宅や事務所ビル、旅館などのバルコニー・屋上に設置されています。

今回の施工事例の概要(東京都世田谷区)

施工事例の概要
所在地 東京都世田谷区
建物用途 店舗などが入る複合用途の建物(消防法上の(16)項イ)/築38年
工事内容 緩降機本体(ロープ長9m)・取付金具(床付金具)・格納箱一式の交換、降下試験、消防署への設置届
交換前の機器 1988年(昭和63年)製の緩降機 ※型式失効品(製造から約38年経過)
工期 1日
工事金額 55万円(税込)

※建物規模、設備構成、施工範囲により費用は異なります。詳しくは現地調査のうえ、お見積りいたします。

今回のご依頼は、建物を管理されている管理会社様からのご相談がきっかけでした。

交換前の状態|型式失効品が使われ続けていた

交換前に設置されていたのは、1988年(昭和63年)製の緩降機でした。製造から約38年が経過し、屋外に設置される取付金具には全体に錆が広がっていました。

交換前の緩降機取付金具。支柱全体に錆が広がっている(東京都世田谷区の緩降機交換工事)

特に注意が必要なのは、支柱を床面に固定するベースプレート(土台部分)です。雨水がたまりやすく、錆による腐食が最も進みやすい箇所ですが、今回も固定ボルトの周囲まで錆が回っていました。

交換前の緩降機取付金具のベースプレート。固定ボルト周辺まで錆が進行している

取付金具は、降下する人の体重をすべて受け止める部材です。ここが腐食で強度を失っていると、避難器具として機能しないだけでなく、使用時の事故につながるおそれがあります。

そして今回、錆や劣化以前の問題として重要だったのが、この緩降機が「型式失効品」だったことです。本体の銘板を確認すると、すでに型式承認の効力を失った古い型式の機器であることがわかりました。

交換前の緩降機本体とリール。銘板は1988年製で、型式番号から型式失効品であることが確認できる

本体を収納していた格納箱も、経年で錆や変形が見られました。格納箱が傷んでいると、内部の本体やロープが風雨にさらされ、劣化を早める原因になります。

交換前の緩降機格納箱。経年劣化により錆が発生している

型式失効とは?そのまま使えない理由

型式失効とは、規格の改正により、古い規格で受けた型式承認の効力が失われることです。型式失効になった機器は、法令で定められた特例期間が終了した後は、そのまま使い続けることができません。

もう少し詳しく説明します。緩降機は、消防法に基づく「検定」の対象機器です。国が定めた規格(規格省令)に適合していることを試験し、型式承認を受けて合格の表示が付されたものでなければ、販売したり、工事に使用したりすることができません。

この規格省令が改正されると、古い規格で承認を受けた型式は効力を失います。これが「型式失効」です。型式失効になると、まず、その型式の機器を新たに設置することができなくなります。すでに設置されているものは、国が定めた特例期間中に限り引き続き使用できますが、特例期間が終了すると検定合格品としての効力を失うため、そのまま使い続けることはできず、交換が必要になります。

緩降機については、着用具の安全性を高める大きな規格改正が平成6年(1994年)に行われました。それ以前の旧規格品は、改正時点で型式失効となっています。今回交換した機器もこの旧規格品にあたり、特例期間もとうに終了していました。つまり、本来であればすでに交換されているべき機器が、20年以上そのまま残っていたことになります。

ご自身の建物の緩降機が型式失効品か確認するには

緩降機本体の銘板に記載された型式番号(「降第◯◯~◯号」)を、メーカーや業界団体が公開している型式失効品の一覧と照合することで確認できます。

とはいえ、屋外の高所に設置された銘板をオーナー様ご自身で確認するのは危険がともないます。当社では、6か月ごとの機器点検(消防設備点検)の際に型式番号まで確認しますので、「うちの緩降機は大丈夫だろうか」という段階からお気軽にご相談ください。

なお、緩降機と同じ避難器具である避難ハッチの交換については、避難ハッチの交換費用は1台20万9,000円から|施工事例・工事の流れ・依頼先を解説で詳しくご紹介しています。

緩降機交換工事の流れを写真で解説

ステップ1 既存の緩降機・取付金具の撤去

まず、既存の緩降機本体・取付金具・格納箱を撤去します。撤去後は、床面の防水層を傷めないよう確認しながら作業を進めます。

撤去前の旧緩降機一式。錆びた取付金具と1988年製の本体・リール(東京都世田谷区の緩降機交換工事)

ステップ2 新しい取付金具(床付金具)の設置

新しい取付金具を床面に固定します。今回は床付タイプの金具を採用しました。固定ボルトはトルクレンチを使い、規定のトルク(締め付けの強さ)で確実に本締めします。

新しい緩降機取付金具のベースをトルクレンチで本締めする様子

感覚に頼らずトルクレンチで管理することで、締め付け不足によるガタつきや、締め過ぎによるボルトの損傷を防ぎます。

ステップ3 アームの展張確認

取付金具のアーム(腕木)を実際に展張し、スムーズに動作すること、手すりや壁と干渉しないことを確認します。

新しい緩降機取付金具のアームを展張した状態

ステップ4 寸法の確認

展張した状態で、壁面からの距離やフックの高さを実測し、基準を満たしていることを確認します(詳しくは次の章で解説します)。

ステップ5 新しい緩降機本体・格納箱の設置

新しい緩降機本体は、現行規格に適合した最新型の可搬式です。ロープ長は、この建物の設置階から地上までの高さに合わせて9mとしました。

新しく設置した緩降機本体の銘板。2026年製・ロープ長9m・現行規格適合品

本体はステンレス製の防水格納箱に、取付金具は専用の屋外用格納箱に収納します。使用方法を示す使用説明板も併せて設置しました。

緩降機本体とステンレス製格納箱、使用説明板の設置後

緩降機取付金具を収納するステンレス製の屋外用格納箱

ステップ6 降下試験・設置後の全景

最後に、実際にロープを降下させる降下試験を行います(詳しくは後述します)。設置後は、格納箱に収めた状態でバルコニーの通行の妨げにならないことも確認しました。ここまでの作業を1日で完了しています。

緩降機交換工事完了後のバルコニー全景。格納箱に収納された状態

設置時に確認する3つの寸法ポイント

緩降機は「設置すれば終わり」ではありません。降下する人が安全に地上へたどり着けるよう、設置基準に沿って寸法を確認します。これらの基準は、避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目(平成8年消防庁告示第2号)に定められています。今回の工事で実測・確認した主なポイントは次の3つです。

ポイント1 壁面からの距離は150mm以上300mm以下

使用の際、壁面からロープの中心までの距離は、150mm以上300mm以下と定められています。壁に近すぎると降下中に体がぶつかり、離れすぎると壁を押さえられず体が安定しないためです。展張した状態でコンベックス(メジャー)を当て、基準の範囲内に収まっていることを実測で確認します。

緩降機の降下位置が壁面から150mm以上300mm以下の基準内であることをメジャーで実測している様子

ポイント2 フックの高さは床面から1.5m以上1.8m以下

緩降機本体をつり下げるフックの取付位置は、床面から1.5m以上1.8m以下の高さと定められています。低すぎるとロープの着用具をうまく装着できず、高すぎると本体を掛ける動作が困難になるためです。今回は床面から1,600mmの位置にあることを実測で確認しました。

ポイント3 着地点は降着面から±500mm以内

ロープの長さは、降下したときに着用具の下端が降着面(地盤面)からプラスマイナス500mmの範囲に収まる長さでなければなりません。ロープが短すぎると宙づりのまま届かず、長すぎると余ったロープが絡まるおそれがあります。

降下試験で着用具が降着面から±500mm以内に降りていることを確認

古い緩降機では、経年でロープが伸縮し、設置当時は適切だったロープ長が基準から外れているケースもあります。交換時には必ず現地でロープ長を確認し、建物の高さに合った機器を選定します。

降下試験機による性能確認と消防署への届出

専用の降下試験機で降下速度を実測

設置後には、実際にロープを降下させる降下試験を行います。リール(ロープ)を地上へ投下し、着用具を降下させて、降下速度と着地点の高さを確認します。

緩降機の降下試験。屋上から降下試験機を使ってロープを降下させる

このとき当社では、メーカー(オリロー社)製の専用の降下試験機を使用しています。実際に荷重をかけた状態で降下させ、降下速度を測定できる機器で、目視や感覚に頼らず数値で性能を確認できます。この降下試験機まで用意して試験を行う業者はまだ少なく、当社の強みのひとつです。

地上からストップウォッチで緩降機の降下速度を測定する降下試験の様子

緩降機の規格(緩降機の技術上の規格を定める省令)では、降下速度は毎秒16cm以上150cm以下と定められています。今回の試験結果は毎秒56cmで、基準の範囲内に収まっていることを確認しました。速すぎれば着地時の衝撃が大きく、遅すぎれば避難に時間がかかります。「ゆっくり、しかし確実に降りられる」ことを数値で確かめてはじめて、工事完了となります。

避難器具の交換後に降下試験まで行う当社の施工の流れは、避難ハッチ交換工事の流れを写真で解説|撤去・防水処理・降下試験まででもご覧いただけます。

消防署への届出

緩降機を含む避難器具の交換では、工事の内容や施工方法によって、消防署への届出など必要な手続きが異なります。今回の工事では、当社で設置届の書類作成から提出まで一括して対応しました。どの手続きが必要かは、工事内容と所轄消防署の運用を確認したうえで当社が判断・対応しますので、オーナー様・管理会社様に手間はかかりません。

緩降機交換工事の費用

今回の工事金額は、55万円(税込)でした。主な内訳は次のとおりです。

工事に含まれる主な項目
区分 内容
機器類 緩降機本体(ロープ長9m)/本体用防水格納箱(ステンレス製)/取付金具(床付金具)/取付金具用ステップ/取付金具屋外用格納箱(ステンレス製)/表示板・使用説明板
工事・試験 取替工事費/試験調整費(降下試験含む)
消防手続き 設置届の作成・届出費

※建物規模、設置階の高さ(ロープ長)、取付金具の形式、格納箱の仕様により費用は異なります。詳しくは現地調査のうえ、お見積りいたします。現地調査・お見積りは無料です。

よくあるご質問

Q. うちの緩降機が型式失効品かどうか調べられますか?

A. はい、調べられます。緩降機本体の銘板に記載された型式番号(「降第◯◯~◯号」)を、メーカーや業界団体が公開している型式失効品の一覧と照合することで確認できます。当社にご依頼いただければ、消防設備点検の際に型式番号まで確認し、型式失効品であればお知らせします。

Q. 緩降機の交換費用はいくらですか?

A. 今回の施工事例では、緩降機本体・取付金具・格納箱一式の交換、降下試験、消防署への設置届まで含めて55万円(税込)でした。費用は、設置階の高さ(ロープの長さ)、取付金具の形式、格納箱の仕様などによって変わります。現地調査・お見積りは無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。

Q. 緩降機は何年で交換が必要ですか?

A. 法令で一律の交換年数が定められているわけではありませんが、屋外に設置された取付金具は錆・腐食が進みやすく、ロープや調速機も経年で劣化します。6か月ごとの機器点検で状態を確認し、錆の進行や動作不良が見られた場合は交換をおすすめします。また、年数にかかわらず、型式失効品で特例期間が終了しているものは交換が必要です。

Q. 交換に消防への届出は必要ですか?

A. 工事の内容や施工方法によって、必要な届出などの手続きが異なります。今回の工事では設置届を提出しました。当社は、所轄消防署の運用確認や事前相談から、オーナー様の届出書類の作成・提出まで一括して代行・サポートしますので、オーナー様・管理会社様の手間はかかりません。

Q. 工事中、建物はそのまま使えますか?

A. はい、お使いいただけます。工事はバルコニーや屋上など緩降機の設置場所とその周辺のみで行うため、居住者様・テナント様は通常どおり建物をご利用いただけます。今回の工事も1日で完了しました。

Q. 点検と工事を同じ会社に頼むメリットはありますか?

A. 消防設備点検を行っている会社であれば、点検時に機器の状態や設置環境を把握しているため、採寸や現地調査のための再訪問を減らせます。当社は1976年の創業以来、自社施工にこだわり、点検から工事、消防手続きまで一貫して対応しています。

まとめ|型式失効品の緩降機は早めのご相談を

緩降機は、火災時に命を預ける避難器具です。取付金具の錆や格納箱の劣化は外から見える「交換のサイン」ですが、外観がきれいでも、型式失効品であればそのまま使い続けることはできません。消防設備点検で指摘を受けた場合や、設置から長い年月が経っている場合は、早めの交換をご検討ください。

チヨダ防災株式会社は、世田谷区をはじめとする東京都23区・多摩地域から、神奈川県・埼玉県・千葉県まで、東京都(新宿本社/町田支店)、神奈川県(横浜本社)、埼玉県(川口市)、千葉県(市川市)の各拠点を活かし、消防設備の点検・工事・消防手続きまで一貫して自社対応しています。緩降機をはじめとする避難器具の交換は、ぜひお気軽にご相談ください。

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