
公開日:2026年8月28日
この記事の要点
- 本記事は、神奈川県相模原市の4階建てビル(住戸と事務所等が入る複合用途の建物)で、消防設備点検で見つかった避難ハッチの下蓋の固着と総合盤の表示灯の不点灯という2つの不具合をまとめて改修した施工事例です。
- 総合盤は表示灯の球切れではなく機器の経年劣化が原因だったため、P型1級総合盤へ本体ごと交換。リニューアルプレートを使い、壁の補修工事なしで施工しています。
- 避難ハッチはステンレス製ハッチと新しい避難はしごに交換し、防水処理まで実施。現場作業は半日で完了し、消防署への届出(着工届・設置届)も当社が一括で対応しました。
- 不具合を1回の工事にまとめると、日程調整・届出・立会いの手間を1度で済ませられます。
消防設備点検の報告書に「避難ハッチ 下蓋固着」「表示灯 不点灯」といった指摘が並んでいて、どこから手をつければよいか迷っていませんか。
避難ハッチは、いざという時に開かなければ避難器具としての役割を果たせません。また、総合盤の表示灯は火災時に押す発信機の場所を知らせるための明かりで、点灯していない場合は、消防設備点検で不良として確認される事項です。
本記事では、神奈川県相模原市の4階建てビルで、この2つの不具合をまとめて改修した工事の内容を、現場写真とあわせてご紹介します。総合盤とはそもそも何なのか、なぜ本体ごとの交換になるのかも、あわせて解説します。
監修者:チヨダ防災株式会社 町田支店 副支店長 平尾 和暉
消防設備士 甲種第4類・第5類/乙種第6類・第7類、第二種電気工事士、防火対象物点検資格者。
本記事の工事は、監修者の平尾が現地調査から施工まで担当しました。
この記事でわかること
工事の概要
今回の工事は、消防設備点検などで確認された不具合の改修としてご依頼いただいたものです。
| 所在地 | 神奈川県相模原市 |
|---|---|
| 建物用途 | 特定用途の複合〔消防法施行令別表第一(16)項イ〕・地上4階建て・築36年(住戸・事務所等) |
| 工事内容 | P型1級総合盤の交換(1箇所)/避難ハッチ・避難はしごの交換(1住戸)・防水処理 |
| 届出(今回提出したもの) | 着工届(避難ハッチ)、設置届(自動火災報知設備・避難ハッチ) |
| 工期 | 半日(現場作業) |
| 施工時期 | 2026年8月 |
点検で見つかっていた不具合は次の2つです。
- 避難ハッチの下蓋が固着していて、いざという時に使用できないおそれがある
- 総合盤の表示灯が、機器の劣化により点灯しない
それぞれ設備の種類も場所も異なりますが、届出と施工を1回の工事にまとめることで、オーナー様・入居者様のご負担を抑えて改修しました。
不具合①:総合盤(機器収容箱)の表示灯が点灯しない
総合盤とは?
総合盤(機器収容箱)とは、自動火災報知設備を構成する「発信機(火災を知らせる押しボタン)」「表示灯(発信機の位置を示す明かり)」「地区音響装置(ベルやサイレン)」を1つの箱にまとめた設備です。マンションの共用廊下や事務所の壁でよく見かける、赤いボタンの付いたあのパネルです。
このうち表示灯は、常時赤く点灯して発信機の位置を知らせるための明かりです。火災時に「押しボタンがどこにあるか」をひと目でわかるようにするための設備なので、点灯していない場合は消防設備点検で不良として確認されます。
▲交換前の総合盤。機器の劣化により表示灯が点灯していませんでした
なぜ本体ごとの交換になるのか
表示灯が点かない場合、まず疑うのは電球の球切れです。しかし今回のように機器自体が古い場合、球を替えてもすぐに切れてしまったり、内部の部品や配線の劣化が原因で改善しなかったりすることがあります。古い機器は交換用の部品の供給も終わっているため、今回は既設の設備との適合を確認したうえで、本体ごと現行のP型1級総合盤に交換しました。
現行の総合盤は表示灯がLED化されており、電球式に比べて球切れが起こりにくくなっています。長い目で見ると、維持の手間を減らせる交換でもあります。
壁の補修工事なしで交換する工夫
埋込型の総合盤は、壁の中のボックスに機器を収めています。古い機器と新しい機器では寸法や端子の位置が異なるため、そのまま取り替えると壁に隙間や穴が残ってしまいます。
今回は、既設の埋込ボックスを活かすための端子位置変換プレートと、寸法差を覆う特注のリニューアルプレートを使用しました。これにより、壁の補修(クロスや塗装のやり直し)を行わずに短時間で交換でき、費用と工期を抑えられる場合があります。
▲交換後の総合盤。表示灯が正常に点灯し、プレートで既存の開口をきれいに覆っています
※自動火災報知設備の工事・整備には消防設備士の資格が必要です。本工事は甲種第4類の資格を有する者が担当しています。
不具合②:避難ハッチの下蓋が固着して開かない
下蓋の固着は「使えない避難器具」のサイン
避難ハッチは、バルコニーの床に埋め込まれた避難器具で、上蓋を開けて中のはしごを展張し、下階へ降りて避難します。このとき、はしごの通り道になる下蓋が固着して開かないと、はしごを降ろすことができず、避難器具として機能しません。
下蓋の固着は、長年の雨水や埃、金具の錆によって起こります。今回の建物は築36年で、避難ハッチにも経年による錆や汚れが見られました。固着は外から見ただけではわからず、点検で実際に作動させて初めて見つかることが多い不具合です。
▲交換前の避難ハッチ
▲開けた状態。内部のはしごや金具にも錆が進行していました
ステンレス製ハッチと新しいはしごに交換
今回は、不具合のあった1住戸の避難ハッチを、改修用のステンレス製ハッチと新しい避難はしごに交換しました。ステンレス製は錆に強く、腐食による固着や、錆び水が下階のバルコニーに落ちるトラブルを抑えられます。
あわせて、ハッチまわりの防水処理も丁寧かつ慎重に行っています。避難ハッチはバルコニーの床を貫通する設備なので、防水処理は雨水の浸入を防ぐうえで特に重要な工程だと考えています。
▲交換後のステンレス製避難ハッチ
▲新しい避難はしごが格納された状態
▲避難はしごは国家検定品を使用しています
今回取り付けた避難はしごの主な仕様は次のとおりです。
- 種別:金属製避難はしご(ハッチ用つり下げはしご・折りたたみ式)
- 長さ:2.4m(7段タイプ)
- 国家検定の合格表示付き
避難ハッチ交換の費用相場や、撤去から防水処理までの詳しい工程は、以下の事例記事で解説しています。
交換後の試験・確認
機器を取り付けて終わりではなく、消防設備として確実に機能することを試験で確認します。今回実施した主な確認は次のとおりです。
発信機の作動試験
新しい総合盤の発信機(押しボタン)を実際に押し、受信機側で発信機灯と警戒区域の表示が正しく出ることを確認しました。押した場所が受信機に正しく伝わることが、自動火災報知設備の基本です。
▲発信機を実際に押して作動試験
▲受信機側で発信機灯と地区表示を確認
終端抵抗の接続・絶縁抵抗の測定
自動火災報知設備の感知器回路には、配線の断線を受信機が監視できるように終端抵抗(終端器)が接続されています。総合盤の交換にあわせて、終端抵抗が正しく接続されていることを確認しました。
また、絶縁抵抗計を使って配線の絶縁抵抗を測定し、数値で問題がないことを確認しています。警報設備の交換では、機器だけでなく配線の健全性まで確認することが大切です。
▲絶縁抵抗計で配線の絶縁を数値で確認
避難ハッチの作動確認
避難ハッチは、上蓋・下蓋の開閉と、はしごの展張・格納が確実にできることを確認しました。「開かないから交換した」設備だからこそ、交換後に確実に開くこと・降りられることの確認まで行って引き渡します。
▲開口部からはしごの降下経路を確認
消防署への届出
今回の工事では、所轄消防署への届出として着工届(避難ハッチ)と設置届(自動火災報知設備・避難ハッチ)を当社で作成・提出しました。
一般に、消防用設備等の工事では、工事内容に応じて消防署への届出等が必要となる場合があります。必要となる届出の種類や手続きは、設備の種類、工事の内容、所轄消防署の運用等によって異なり、今回のように同じ避難ハッチの交換でも、地域によって求められる届出が変わることがあります。当社は一都三県を中心に幅広い地域で工事を行っており、それぞれの消防署と事前に協議しながら手続きを進めますので、オーナー様・管理会社様に届出の準備をしていただく必要はありません。
ご注意:届出書類には建物の平面図・立面図が必要です。図面が保管されていない場合は、届出用の図面作成から当社で対応できます(別途費用)。また、竣工時や売買の際に受け取った図面は、しっかりと保管しておいていただくことを強くおすすめいたします。
まとめて改修するメリット
今回のように、種類の異なる不具合を1回の工事にまとめると、次のようなメリットがあります。
- 日程調整が1度で済む——避難ハッチの交換は住戸のバルコニーに立ち入るため入居者様との調整が必要ですが、工事日をまとめることでご負担を抑えられます。
- 届出・立会いを一括で進められる——設備ごとに別の業者へ依頼すると、届出や消防署対応もそれぞれに発生します。
- 諸経費を抑えやすくなります——出向回数が減る分、交通費や運搬費などの重複を抑えられます。
当社は消防設備点検から工事、届出までを自社で一貫して行っているため、点検報告書の指摘事項を「どれから・どうまとめて直すか」の段階からご相談いただけます。
よくあるご質問
Q. 総合盤の表示灯が点かない場合、電球の交換だけで直りますか?
A. 球切れが原因であれば、電球の交換で直る場合もあります。ただし、表示灯は火災時に発信機の場所を知らせるための明かりなので、日常的に点灯し続けていなければ意味がありません。機器が古いと、点検のときに電球を交換して少しの間点いても、またすぐに切れてしまうことがあります。部品供給の状況や機器の状態を確認したうえで、本体交換をご提案することがあります。現地で状態を確認のうえ、最適な方法をご案内します。
Q. 避難ハッチは不具合のある住戸だけの交換もできますか?
A. できます。今回も不具合のあった1住戸のみを交換しました。ただし、同じ時期に設置されたハッチは他の住戸でも劣化が進んでいることが多いため、点検結果を踏まえて、まとめて交換するか順次交換するかをご提案しています。
Q. 総合盤の交換中、建物の警報設備は使えなくなりますか?
A. 交換作業中は該当回路を一時的に停止しますが、作業は計画的に短時間で行い、作業後は作動試験で復旧を確認します。工事中の防火管理上の注意点もあわせてご案内しますのでご安心ください。
Q. 費用はどのくらいかかりますか?
A. 建物規模、設備構成、配線の劣化状況、施工範囲により費用は異なります。詳しくは現地調査のうえ、お見積りいたします。避難ハッチ交換の費用の目安は避難ハッチ交換の費用相場の解説記事をご覧ください。現地調査・お見積りは無料です。
まとめ
避難ハッチの固着も、総合盤の表示灯の不点灯も、普段の生活では気づきにくい不具合です。しかしどちらも、火災という「いざという時」に確実に働かなければならない設備です。今回の相模原市の建物のように、点検で見つかった不具合は放置せず、まとめて改修することをご検討ください。
チヨダ防災株式会社は1976年の創業以来、消防設備の点検・工事を自社施工で行ってきました。東京都(新宿本社/町田支店)、神奈川県(横浜本社)、埼玉県(川口市)、千葉県(市川市)の各拠点から、一都三県を中心に対応しています。今回の相模原市の現場へは、隣接する町田支店が現地調査から施工まで対応しました。点検で指摘を受けた不具合の改修は、届出から施工・試験までまとめてお任せください。



